ぼくらも採用試験管…教師の採用に小学校・中学校の代表も採用試験の評価を。(埼玉県行田市)

自前の予算で採用する教師の選考に、子供の代表を加える自治体がある。

「友だちみたいに話せる」「こんな先生がいればいいな」。好意的な記述がある一方で、「声が小さくて暗い」「計算の教え方がくわしくない」といった辛口の指摘もある。小中学生が記した意見は、大人の見方とはひと味違っていた。

埼玉県行田市が今年1月29日に実施した小中学校の市費教員採用の2次試験。

受験者が取り組む模擬授業の出来栄えを採点するのは、校長、ベテラン教師、保護者の代表だが、小学校の教師の時には小学生の代表が、中学校の教師の時には中学生の代表が立ち会い、自分なりの評価を下す。

小学生は6年生、中学生は2年生で、各校の校長が推薦した児童会や生徒会の役員などから任命される。期待されているのは、受験者に対して抱く「子供なりの印象」だ。

自由意見のほかに、「わかりやすい」「授業をもっと受けてみたい」「熱意がある」といった六つの判定基準があり、「当てはまる」と思った項目に子供たちは「○」をつける。

名付けて「子ども試験協力員」。少人数学級実現のため、年間約1億円の予算を投じて、2004年度から任期1年で小中学校の教師を独自に採用する試みとともにスタートした。今年1月の2回目の採用試験では、「試験協力員」を初年度より小中で8人ずつ増やし、小中学生各24人が授業の評価に臨んだ。

選考そのものは、模擬授業と面接に立ち会った大人の試験官の採点をもとに、教育委員や大学教授ら計20人の合議で進められる。ただ、採点結果が競りあうこともある。「そんな時、子供の評価や感想を尊重して選ぶ」(野口英昭・教育委員長)のだ。

「採用試験に子供は入れるべきではない」と反対する声も現場の教師からはあった。が、「子供を加えることで、実際の授業に近い形で採用試験を行うことが可能」という市教委の見解に共感が広がっていった。

採用試験への参加は、子供たちにも自覚を促す。6年生の時に協力員を務め、現在は中1の男子生徒は「自分たちが質問しやすい人、親しみやすい人は、後輩にとってもいい先生のはずと、後輩のことを考えて選んだ」と振り返る。

同市の市費教員試験の応募者の多くは、都道府県の採用試験に失敗した経験を持つ。ただ、「親しみやすい」「子供の立場で考えてくれる」など、教育者としての能力の中には、試験では測りにくいものもある。「大人が見抜けない教師としての適性を、子供の目を通して判断できるのではないか」と、市教委の担当者は期待を語る。

170人の受験者から選ばれた小学校7人、中学校10人に今月1日、1年任期の辞令が交付された。中学で英語を教える中野恵美さん(24)は「子供たちにも選ばれたということを忘れずに全力を尽くしたい」と決意を語った。(山田 博文)

◆高知では小中高校で授業評価

子供の視点や意見を取り入れる試みは、教師の授業評価にも及んでいる。高知県では1997年度から全公立小中学校で子供による授業評価をスタートさせた。よりよい授業づくりを目指すのが狙いで、98年度には全県立高校にも広げた。

東京都でも、04年度から全都立高校で生徒による授業評価が始まった。やはり生徒の意見を反映させることで「分かる授業」「魅力ある授業」づくりがテーマだ。

(2005年4月9日  読売新聞)

緊張した表情に決意がにじむ。今月1日の市費教員辞令交付式
YOUMIURI ONLINEより
志木市と行田市のやっていることを組み合わせて熊本でも出来ないものでしょうか?!